AIの請求書は、使った時間では決まりません。やりとりした文字の量で決まります。第2章で出てきたトークンです。
渡した文章(入力)と、返ってきた文章(出力)の両方が数えられます。出力のほうが単価は高く、モデルによって単価は十倍以上違います。つまり請求額は、何回使ったかより、毎回どれだけ渡してどれを呼んだかで決まります。
言葉で説明するより、実際の内訳のほうが早いと思います。YOHAKU OS が直近30日でAIを呼んだ記録です。
呼び出した回数 ── 1,779回
やりとりしたトークン ── 713,759
かかった金額 ── 0.45ドル
使ったモデル ── 6種類
検索用の変換(埋め込み) ── 1,508回 / ほぼ0
軽いモデル ── 207回 / 17%
標準のモデル ── 30回 / 3%
いちばん強いモデル ── 23回 / 80%
ここに、この章でお伝えしたいことが全部入っています。呼び出しの85%を占める処理の費用はほぼ0で、全体の1.3%しかない23回が、金額の8割を占めています。
ですから、費用を心配するときに数えるべきは回数ではありません。強いモデルを、何回呼んでいるかです。
逆に言えば、たくさん使うこと自体は怖くありません。軽い処理をいくら回しても、金額はほとんど動きません。動くのは、難しい判断を強いモデルに任せた回数のぶんだけです。
1. 毎回、資料をまるごと渡している
100ページの手順書を毎回添えると、毎回そのぶん課金されます。
2. 何度も作り直させている
指示があいまいだと、やり直しの回数がそのまま金額になります。
3. 既定が、いちばん強いモデルになっている
いちばん影響が大きいのがこれです。全部を最上位で処理すると、桁が変わります。
まず既定を軽いモデルにします。難しいと判定されたときだけ、強いモデルへ上げる。当社の内訳がこの形になっているのは、そう組んであるからです。
次に資料は検索してから、必要な部分だけ渡します。第3章のRAGは、精度のための仕組みとして説明しましたが、費用にも同じくらい効きます。全部渡すのをやめられるからです。
最後に枠を決めて、超えそうなら止めます。当社は毎日13時15分に使用料を集計し、決めた上限に近づいたら処理を止める仕組みを置いています。請求書を見て驚く形にはしません。
上の0.45ドルは、AIを呼び出したぶんの従量だけです。毎月実際に払っている額は、これよりずっと大きくなります。ClaudeやChatGPTの月額契約と、作ったものを動かす基盤の利用料が入っていないからです。当社の2026年9月の台帳を、科目ごとにそのまま開きます。
AIの月額契約 ── 459.67ドル
Claude Max ── 220.00ドル
ChatGPT Pro ── 200.00ドル(円建ての契約で 30,000円)
Midjourney(画像の生成) ── 30.00ドル
Google AI Plus ── 9.67ドル(1,450円)
AIの追加利用(前払いのチャージ) ── 104.00ドル
Claude の追加利用枠 ── 99.00ドル
Gemini API ── 5.00ドル
作ったものを動かす基盤 ── 196.64ドル
GitHub Actions(自動検査の実行時間の超過分) ── 120.25ドル
Vercel(サイトの公開) ── 44.89ドル
Supabase(データベース) ── 27.50ドル
GitHub Pro ── 4.00ドル
自社サーバーの電気代(推計) ── 14.74ドル
合計 ── 775.05ドル(1ドル150円で 約11.6万円)
いちばん大きいのはAIの月額契約で、合計の約6割です。呼び出しの従量は今月(2026-09-21 時点)で0.83ドル、合計の0.1%ほどしかありません。「AIの費用=呼び出し代」と考えると、請求のほとんどを見落とします。
月によっても動きます。8月の台帳の合計は831.52ドル(約12.5万円)でした。Claude Max を2契約にしていた月です。9月から1契約に戻し、ChatGPT Pro との併用に切り替えました。
この表にも、入っていないものがあります。
では、この額は高いのか、安いのか。比べる相手として、人に頼んだ場合の相場を置きます。相場は他社が公表している値で、当社の実測ではありません。
当社のAIと基盤の実費(2026年9月) ── 約11.6万円
AIエンジニア 1人月の相場 ── 100〜180万円(ripla・2026-06)
バックエンドエンジニア 1人月の相場 ── 80〜130万円(ripla・2026-06)
AIエンジニア1人月の相場の、およそ9分の1から15分の1
時給で比べる方法もあります。約11.6万円を時給2,000円(説明のために置いた仮の数字です)で割ると、約58時間。1日8時間なら、7日と少しです。ご自身の会社の時給に置き換えて、計算してみてください。
ただし、この比べ方には限りがあります。三つ書いておきます。
当社の料金の組み立ては料金のページに、内訳のまま書いています。
全9章、お読みいただきありがとうございました。ここまでの内容は、すべて当社が自社で動かしているものから書いています。数字も、都合のよい期間を選ばずに、測った日付といっしょに載せました。
読んでみて「うちの場合はどうか」と思われたら、そこが入口です。何を頼めるかが決まっていない段階からで構いません。
C-09-1 請求書は何で決まるか ── 料金は、渡した量と返した量で決まります。
C-09-2 質を落とさずに下げる ── 安くする方法は、値切ること以外にあります。
C-09-3 仕事1件あたりで測る ── 総額が増えたことは、悪い知らせとは限りません。