一日が終わって、何をしたか思い出せない日があります。予定表は埋まっていた。けれど、決めたことは一つか二つしかない。残りの時間は、どこへ行ったのか。
多くの場合、消えているのは「決める前の準備」です。あの見積はいくらだったか。前に似た話をしたのはどのお客様か。あの協力先の空きはいつか。この三つを思い出し、探し、突き合わせるまでが準備で、決めること自体は最後の三十秒です。
ここを取り違えると、対策も外れます。入力や転記といった作業を減らしても、忙しさはあまり変わりません。作業は誰かに頼めるからです。頼めないのは、社内のあちこちに散った情報を頭の中で一本につなぐ仕事のほう。それができる人が、たいてい社内に一人しかいません。
AIを入れて実際に軽くなるのは、このまん中の層です。決めることは減りません。減らすべきでもありません。
時間が足りないのではなく、
決める前に、毎回同じ道を歩き直していた。
| 減りうるもの | これまで | 仕組みを入れたあと(試算) |
|---|---|---|
| 人を増やす固定費 | 手が足りず一人採用すると、月々の人件費が固定で増えます。景気の波では、簡単には戻せません。 | 定型の作業を仕組みへ寄せられたぶん、その採用を先延ばしにできる場合があります。人にしかできない仕事のために人を回す、という順にできます。 |
| 外への説明・準備の工程 | 税理士やコンサルへ、状況の説明・資料の準備・論点の整理を、毎回こちらからお願いしています。 | その手前の工程が社内で済むと、外へ払う分の中身が変わります。同じ顧問料でも、相談の密度が上がります(後述)。 |
| 探し直しの時間 | 見積・履歴・空き状況を、そのつど探して突き合わせています。人件費に置き換えると、見えにくい費用です。 | 記録から引ける状態になれば、探す時間が減ります。その時間を金額に直す試算は、次の節に置きました(04)。 |
お約束できる数字ではありません。減る額は、事業の中身と、いま何に時間を使っておられるかで変わります。当社がお勧めしているのは、三か月ほど並走させて、浮いた時間と、かかった費用を実額で並べるやり方です。浮くほうが買うほうを下回るなら、入れないほうがよい、という判断も当然あります。
導入と運用の費用の隣に、
減るかもしれない側の数字を、置いてみる。
先にお断りしておきます。これは、人を仕組みに置き換えるという話ではありません。人にしかできない仕事に人を回すために、それ以外をどう減らすか、という話です。採用が正解である場面は、はっきりあります。
| 見るところ | 人を一人、増やす | 仕組みを、入れる |
|---|---|---|
| 立ち上がるまで | 募集・面接・入社手続き。仕事を覚えるまでの数か月は、教える側の時間も同時に減ります。 | 業務を書き出して渡すまでが山です。動き出したあとに教え直す手間は、ほとんどかかりません。 |
| 経営者の時間 | 増えます。指示・確認・評価・面談。人が増えるほど、経営者の時間は比例して要ります。 | 設計のあいだは要ります。動き出したあとは、報告を読む時間だけになります。 |
| やめるとき | 簡単には減らせません。景気や受注の波を、雇用で吸収するのは無理があります。 | 月単位で止められます。蓄えたデータは、そのままお手元に残ります。 |
| 向いている仕事 | 気配りが要る仕事、責任を負う仕事、初めての相手と信頼をつくる仕事。 | 毎回同じ手順の仕事、量が多く漏れが怖い仕事、深夜や休日に発生する仕事。 |
どちらが優れているという表ではありません。下の二行が重なっていないことが、この表で申し上げたい点のすべてです。重ならないものを費用だけで比べると、判断を誤ります。
04 ── DO THE ARITHMETIC
仕組みの費用が高いか安いかは、他社との比較では決まりません。その金額で、自社の何時間ぶんが買えるのかで決まります。ご自身の会社の時給に置き換えて、計算してみてください。以下は、時給を仮に2,000円とした場合の例です。
小規模 ── 代表+数名
1営業日あたり約2.3時間
月22営業日として。この時間を上回って浮けば、割に合っています
中規模 ── 社員15名ほど
1営業日あたり約5.7時間
社員15名で割れば、一人あたり1日23分ほどです
どの規模でも
判断は三か月で
一か月では季節の波と区別がつきません。三か月は見てから決めてください
時給2,000円は、説明のために置いた仮の数字です。公的な統計でも、当社が調べた相場でもありません。ご自身の会社の人件費を月の総労働時間で割った値に置き換えて、計算し直してください。月額と帯の内訳は料金 ── 三つの帯にあります。浮いた時間が買った時間を下回るなら、導入しないほうがよいという判断も、当然あります。
経営者の孤独は、性格の問題ではなく、立場の構造から来ます。社員には言えないことがある。家族には背景の説明から始めなければならない。税理士は数字を見てくださいますが、いま決めたい場面には間に合わないことがある。結果として、いちばん重い判断だけが、いつも一人で行われます。
| 話す相手 | 話せること | 話しきれないこと |
|---|---|---|
| 社員 | 方針、段取り、次の一手。 | 資金繰りの心配、人の評価、そしてまだ迷っているということ自体。 |
| 家族 | 気持ちのところ。 | 判断の材料。毎回、業界と経緯の説明から始めることになります。 |
| 税理士 | 数字の正しさ、税務上の可否。 | 試算表や決算を挟むぶん、時間の軸がずれます。いま決めたい場面には、間に合わないことがあります。 |
| コンサルタント | 一般的な型、他社での事例。 | 御社の十年。契約が終われば、その間に溜まった文脈も一緒に去ります。 |
埋まらない理由は、相手の力量ではありません。会社のことを全部知っていて、いつでも、何度でも付き合えるという条件を、人間の側で満たすのが難しいだけです。ここから先は、その条件を仕組みの側で満たすとどうなるか、という話になります。
過去の見積、議事録、失敗の経緯。人間には量が多すぎて読み返せないものを、AIは毎回読み直したうえで意見を返します。「前に似た条件で赤字になっています」と言えるのは、忘れないからです。
同じ質問を三度しても、初歩的な確認をしても、態度が変わりません。人に聞くときに働く遠慮が、ここには要りません。壁打ちの回数を増やせること自体が、判断の質を上げます。
提案する側と、それを疑う側を、別々のAIに分けてあります。一つのAIに聞くと、たいてい賛成が返ってきます。反対する役を構造として置かないと、追認する機械になります。議論の仕組みに、その配置を書いています。
AIは責任を負いません。言葉にならない勘も、その相手との十年の付き合いも知りません。だから最後は必ず人間に返します。ここを省いて進める例外は、そもそもつくっていません。忙しい日には、必ずそちらが使われてしまうからです。
相談相手がほしいのであって、
代わりに決めてくれる人がほしいわけではない。
税理士やコンサルタントへ毎月お支払いになっている金額は、その方の判断だけに対して払われているわけではありません。多くはその手前──状況を説明し、資料を揃え、数字を並べ、論点を整えるまでの工程に消えています。ここは資格が要る仕事ではありません。
| 工程 | これまで | 仕組みを入れたあと |
|---|---|---|
| 状況を説明する | 毎回こちらから、口頭と資料で。担当が替わればまた最初から。 | 要らなくなります。経緯が記録として残っているので、説明を組み立てる時間が消えます。 |
| 数字を整える | 依頼して、待って、受け取る。往復で数日かかります。 | 要らなくなります。手元でその場に出ます。 |
| 選択肢を並べる | 打ち合わせの時間そのものを使って、その場で組み立てる。 | 先に済んでいます。たたき台がある状態から、打ち合わせが始まります。 |
| 判断する | 経営者。 | 経営者のまま。ここは変わりません。 |
| 税務申告・税務相談 | 税理士。 | 税理士のまま。税理士法で定められた業務であり、当社は行いません。 |
上の三行が、いま外にお支払いになっている金額の大きな部分です。そこが社内で終われば、外へお願いするのは資格と責任が要る仕事だけに絞れます。同じ顧問料でも、中身が変わります。
外から借りていた頭を、会社の中に置く。
契約が終わっても、考えた跡だけは残ります。
コンサルタントとの契約でいちばん惜しいのは、費用ではなく、終わったあとに何も残らないことだと考えています。そのあいだに交わした議論、比較した案、見送った理由。それらが会社の記録として積み上がっていれば、次に同じ種類の判断が来たとき、ゼロからやり直さずに済みます。仕組みを入れるというのは、道具を買うことではなく、この積み上がる場所をつくることです。
「まず本業に集中すべきでは」と、よく言われます。ただ、公表されている調査を見るかぎり、数字はそれほど単純ではありません。中小企業庁の2017年版 中小企業白書は、新市場開拓・新製品開発・多角化・事業転換の四つをまとめて「新事業展開」と呼び、経常利益率との関係をこう書いています。
新事業展開を実施している企業は、
実施していない企業と比べて、
経常利益率が増加傾向にある。
出典:中小企業庁「2017年版 中小企業白書」第2部第3章第1節 新事業展開の重要性。同図のもとになっているのは、中小企業庁の委託で2016年11月に25,000社を対象に実施されたアンケート(回収率15.1%)です。他社を集計した結果であって、御社の成果をお約束するものではありません。ただ、「一つに絞るほうが安全だ」という感覚が、数字の裏づけを持っているわけでもない、とは申し上げられます。
| 場面 | 事業が一つ | 事業が複数 |
|---|---|---|
| 需要が落ちたとき | 落ちたぶんが、そのまま会社の落ち込みになります。 | 別の事業が動いているあいだに、立て直す時間がつくれます。 |
| 覚えておくこと | 流れが一本なので、頭の中に入ります。 | 足し算では増えません。掛け算で増えます。事業ごとの手順の上に、事業をまたぐ判断が乗るためです。 |
| 人 | 同じ仕事を、分け合えます。 | 事業ごとに要ります。増やすたびに人を雇うという道しかなければ、そこで止まります。 |
三行目が、実際に止まるところです。複数持ったほうがよいことは分かっていて、それでも増やせない。理由はたいてい、人と、覚えておくことの量です。増やしたいのは事業で、増やしたくないのは固定費と、覚えておくことの量。YOHAKU OS は、この一点に置かれています。
ここから、AIの話になります。覚えておくことが掛け算で増えるのなら、それを引き受ける側も、一体では足りません。一つのAIに全部を持たせるのではなく、役割ごとに分ける。これがマルチエージェントと呼ばれる形で、当社がはじめからこの形をとっている理由です。
| 場面 | 一体のAIに全部 | 役割を分けた形(この仕組み) |
|---|---|---|
| 扱える量 | 一度に読み込める分量に上限があり、事業が増えるほど溢れます。 | 観測・記憶・段取り・判定に分け、それぞれが自分の担当ぶんだけを持ちます。 |
| 同時に進む仕事 | 順番に一つずつ。前が終わるまで、次は始まりません。 | 別々の事業の調べものを、同時に進められます。 |
| 一体が不調のとき | 全部が止まります。 | その一体を切り離し、残りで動き続けられます。 |
| 費用 | 安く済みます。 | 高くつきます。同じ問いでも、処理する分量が何倍にもなるためです。 |
最後の行は隠しません。AI開発元の Anthropic は自社の技術記事で、役割を分けた構成が同じモデル一体の構成を社内の調査タスク評価で90.2%上回った一方、やりとりする分量はおよそ15倍になったと公表しています。同社は同時に、全員が同じ文脈を共有しなければならない仕事には向かないとも書いています。ですので当社も、何でも分けているわけではありません。分けるのは、別々に進められる仕事だけです。出典:Anthropic「How we built our multi-agent research system」(英語)。役割の分け方と当社の実測値はYOHAKU OSに、専門用語を使わない説明は解説・入門 第5章に書いています。
全社に一度で入れることは、おすすめしていません。うまくいかなかったときに、何が原因だったのか分からなくなるためです。一つの業務から始めて、三か月で判断できる形にします。
効果が大きそうな業務ではなく、毎回いちばん負担の重い業務を選んでください。続くかどうかは、机上の試算よりも、使ってみたときの実感で決まります。どれを選ぶかを切り分けるところまでは、費用をいただかずにご一緒します。
置き換えではなく、しばらく二重に走らせます。結果が合っているかを見比べられますし、合わなければ止めるだけで元に戻ります。戻れないやり方は、最初から採りません。
浮いた時間と、かかった費用を並べます。合わなければ、そこでやめて構いません。契約を続けていただくための説得はしません。月単位で止められる形にしてあるのは、この判断を軽くするためです。
09 ── QUESTIONS
その心配は、実際に出ます。私たちが先にお願いしているのは、減らす対象を人ではなく作業で名指しすることです。「この転記をやめる」と言えば話は進みますが、「効率化する」と言うと、全員が自分の席を数えはじめます。導入の説明をどう組み立てるかは、仕組みの設計と同じくらい重要だと考えています。
新しい操作を覚えていただかなくて済む形を、先に探します。すでに毎日開いているもの──メールやチャットや表計算──の中で完結するなら、そこに置きます。新しい画面を一つ増やすたびに、使われなくなる確率が上がるためです。
業種で決まる話ではないと考えています。決まるのは、同じ手順を繰り返している仕事があるかどうかです。逆に、毎回まったく違う判断をしている仕事しかない会社であれば、いま急いで入れる理由はありません。伺ったうえで、そのようにお伝えすることもあります。
お約束できる数字がありません。事業の中身と、いま何に時間を使っておられるかで変わるためです。当社自身の実測値であれば公開しています(YOHAKU OS)が、それが御社でも同じように出るとは申し上げられません。三か月並走させて、実際の数字で判断するという進め方をおすすめしているのは、そのためです。
そうお勧めはしません。決めていただくのは御社です。ただ、切るか続けるかを考える前に、いま何にお支払いになっているのかを工程で分けてみることをお勧めします。税務申告や税務相談は税理士法で税理士の業務と定められており、当社は行いません。一方、状況の説明・資料の準備・論点の整理は、社内で終わらせられる部分です。ここが社内で済むと、同じ顧問料でも相談の中身が変わります。契約を切るためではなく、相談の密度を上げるために使っていただくほうが、実際には効きます。
資料のご準備は要りません。いま困っていることを、順番も整理もされないまま話していただくのがいちばん早いです。パソコンやサーバーの購入も、この段階では不要です(機器は料金のページのとおり、当社では販売しておりません)。
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「何に時間を取られているか分からない」という段階からで構いません。そこを一緒に切り分けるところが、いちばん最初の仕事です。この段階で費用はかかりません。
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