先月より増えていたとします。悪い知らせでしょうか。流れた件数が倍になっていたのなら、むしろ効率は上がっています。
反対に、件数が同じまま増えていたら、どこかで無駄が増えています。総額は、量の変化と効率の変化が混ざった数字です。混ざったままでは、打つ手が決まりません。
増えた減ったの話が毎月出るのは、たいてい見方が総額のままだからです。見方を変えるだけで、話す内容が変わります。
やることは単純で、期間の費用を、その期間に処理した件数で割るだけです。これで量の影響が消えます。
1件あたりの費用 ── 効率の物差し。作りを直すと、ここが動きます。
処理した件数 ── 使われ方の物差し。増えているなら、役に立っています。
人が手を入れた件数 ── 手間の物差し。減っていなければ、置き換わっていません。
三つ並べると、総額が増えた理由がその場で分かります。数字は、割ってはじめて意味を持ちます。
件数の取り方は、仕事の単位に合わせます。問い合わせ一件、記事一本、点検一回。お客様に説明できる単位にしておくのがこつです。
途中で単位を変えると、前の月と比べられなくなります。いったん決めたら、しばらく変えないほうが役に立ちます。
費用だけを見ると、下げること自体が目的になります。当社が必ず並べるのは、減った人の手間です。第6章で「精度と費用と手間を三つ並べる」と書いたのと同じ形です(C-06-1 何を測るかを先に決める)。
手間が減っていないのに費用だけかかっているなら、それは止める判断ができます。逆に、費用が増えても手間が大きく減っているなら、続ける判断ができます。どちらも、並べていなければ決められません。
手間の減り方は、時間で測らなくても構いません。人が触った件数が減っていれば、それで十分に分かります。
使いすぎは、たいてい繰り返しから起きます。うまくいかず、もう一度、もう一度と回るうちに膨らみます。ですから上限は、あとで見るのではなく、動かす前に決めておきます。
繰り返しの回数に上限を置く話と同じ考え方です(B-04-2 繰り返しの上限と、戻し方)。超えたら止めて、人に上げます。止まって届くほうが、黙って増え続けるよりずっと安く済みます。
上限は、金額だけでなく回数でも置けます。回数のほうが、どこで止まるかを想像しやすいという利点があります。
目標値を先に決めて、そこからの外れ方で判断する進め方は、運用の実務書でも基本に置かれています。Google SRE Book「Service Level Objectives」(英語)↗
見分け方は簡単です。件数と一緒に増えているなら、それは使われている証拠です。件数が変わらないのに増えているなら、作りか使い方のどちらかが変わっています。
後者に気づくには、毎月同じ形で並べておく必要があります。比べられる形で残していないと、変化そのものが見えません。
同じ形で残すのは、道具ではなく決めごとの話です。項目を変えたくなったときこそ、変えない理由を確かめます。
数字を見るときに、まず分けて比べる姿勢そのものが要ります。Google「適切なデータ分析」↗
当社は、直近7日で 88件、30日で 373件 の決定を扱っています(AIの中身)。費用も、この決定の件数と並べて見ています。総額ではなく、決定一件あたりで見るということです。
この見方にしてから、話が早くなりました。増えた月でも、件数が増えていれば議論になりません。見る形を決めておくと、毎月の判断そのものが軽くなります。
もう一つ変わったのは、下げる相談が減ったことです。理由の分かる増え方なら、そもそも下げる必要はありません。
ここまでで、棚A「ことばをそろえる」・棚B「仕事をまかせる」・棚C「まかせたあとを守る」の九つの章が揃いました。順に読んでも、気になる棚だけを開いても構いません。全体のつながりは、見取り図にまとめてあります。
章と記事の全体は図書館の見取り図で一枚にまとめています。