「どこまで任せられますか」。いちばん多くいただく質問です。
全部を自動にすると、いつか戻せないことが起きます。かといって、全部を人の確認に回すと、確認の列が伸びて仕組みごと止まります。止まる理由が違うだけで、どちらの端も同じように行き詰まります。ですから線を引く、という作業から逃げられません。
当社が使っている基準は二つです。多くしても運用できません。
問い1 ── 間違えたら、戻せますか。
記録の追加、集計のやり直し、下書きの作り直しは戻せます。削除と送信は戻せません。
問い2 ── それは、外に出ますか。
社内の集計は外に出ません。お客様へのご連絡、記事の公開、SNSの投稿は外に出ます。
両方とも「いいえ」なら、自動でよい。どちらかが「はい」なら、人が決める。それだけです。効率のよさで判断していないところが要点です。効率で決めると、いちばん危ないものがいちばん自動化されます。
この基準で、実際に線の外に置いているものを要約します。細目は運用上の取り決めなので省きますが、区分はこの五つです。
お金に触ること ── 会計の処理、請求、見積の提示、値引きの判断
約束すること ── 契約、条件の取り決め
外に出すこと ── 記事の公開、SNSの投稿、お客様への最初のご連絡
戻せないこと ── データの削除、仕組みそのものの書き換え
中身を預けること ── 個人情報や社内資料を、外の仕組みへ渡すこと
この五つは、実績を積んでも自動には移しません。移せる性質のものではないからです。
線の引き方が具体的に効くのは、この形です。
たとえばお問い合わせが届いたとき、当社の仕組みは返信の下書きをすぐに用意します。要点の整理、過去の似た案件の引き当て、こちらから確かめたいことの候補まで。ここまでは自動です。ところが、送信はしません。読んで、直して、送るかどうかを人が決めます。
記事も同じです。決まった曜日に下書きが書かれますが、公開はされません。手前の九割を自動にして、最後の一手だけを残す。これが、いまのところいちばん実用的な形だと考えています。
この区分を公開しているのには理由があります。線が見えないと、任せる範囲をご自分では決められないからです。
「AIにお任せください」とだけ言われた場合、任せた先で何が起きるのかは分かりません。どこで止まるのかが分かってはじめて、任せる判断ができます。ですから当社は、できることと同じ熱量で、やらないことを書きます。
決めるべきことだけが人間を通る。それ以外は自動で動く。
最初から広く自動にはしません。第4章で書いた歯止めを置いたうえで、試運転から始めます。記録が積み上がって、判断のぶれが小さいことが確かめられたものだけ、自動の側へ移します。
逆方向にも動きます。おかしな結果が続けば、自動から人の手前へ戻します。信頼は最初に渡すものではなく、実績で得るものとして扱っています。ただし、03の五つは動かしません。
ご相談のとき、まずこの線をどこに引くかから決めます。何ができるかより、何を任せないかを先に決めたほうが、あとが楽になるためです。
C-07-1 自動にしないと決めた仕事 ── できるかどうかとは別に、決めておく線。
C-07-2 承認をどこに置くか ── 止める場所が一つだけだと、そこが詰まります。
C-07-3 間違えたとき、誰が答えるか ── 責任は移せません。説明できる形にしておきます。