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人が決めること ── BOUNDARY 2026-07-25 読了 約5分

第7章 人が決めること
── 自動化しない線

この章について

「どこまで任せられますか」といちばん多く聞かれます。当社には、実績を積んでも自動には移さない区分があります。何を線の外に置き、なぜそう決めたのか。実際に運用している区分を要約してお見せします。

連載「AIとは何か、から『費用』まで」全9章第7章 / 全9章
  1. 01AIとは何か ── 例から規則を見つける道具
  2. 02生成AIとLLM ── 次にくる言葉を予測している
  3. 03RAG ── AIに、調べてから答えさせる
  4. 04エージェント ── 道具を使い、自分で動くAI
  5. 05マルチエージェントとオーケストレーション
  6. 06評価 ── 「動いた」と「合っている」は別
  7. 07人が決めること ── 自動化しない線
  8. 08監視と自己修復 ── 落ちたときに何が起きるか
  9. 09費用 ── AIの請求書は何で決まるか

01どちらの端も、うまくいきません

「どこまで任せられますか」。いちばん多くいただく質問です。

全部を自動にすると、いつか戻せないことが起きます。かといって、全部を人の確認に回すと、確認の列が伸びて仕組みごと止まります。止まる理由が違うだけで、どちらの端も同じように行き詰まります。ですから線を引く、という作業から逃げられません。

02線を引く基準は、二つだけ

当社が使っている基準は二つです。多くしても運用できません。

二つの問い

問い1 ── 間違えたら、戻せますか。
記録の追加、集計のやり直し、下書きの作り直しは戻せます。削除と送信は戻せません。

問い2 ── それは、外に出ますか。
社内の集計は外に出ません。お客様へのご連絡、記事の公開、SNSの投稿は外に出ます。

両方とも「いいえ」なら、自動でよい。どちらかが「はい」なら、人が決める。それだけです。効率のよさで判断していないところが要点です。効率で決めると、いちばん危ないものがいちばん自動化されます。

03当社が自動にしていないこと

この基準で、実際に線の外に置いているものを要約します。細目は運用上の取り決めなので省きますが、区分はこの五つです。

自動化しないもの ── 五つの区分

お金に触ること ── 会計の処理、請求、見積の提示、値引きの判断
約束すること ── 契約、条件の取り決め
外に出すこと ── 記事の公開、SNSの投稿、お客様への最初のご連絡
戻せないこと ── データの削除、仕組みそのものの書き換え
中身を預けること ── 個人情報や社内資料を、外の仕組みへ渡すこと

この五つは、実績を積んでも自動には移しません。移せる性質のものではないからです。

04「下書きまでは自動、送信は人が」

線の引き方が具体的に効くのは、この形です。

たとえばお問い合わせが届いたとき、当社の仕組みは返信の下書きをすぐに用意します。要点の整理、過去の似た案件の引き当て、こちらから確かめたいことの候補まで。ここまでは自動です。ところが、送信はしません。読んで、直して、送るかどうかを人が決めます。

記事も同じです。決まった曜日に下書きが書かれますが、公開はされません。手前の九割を自動にして、最後の一手だけを残す。これが、いまのところいちばん実用的な形だと考えています。

05なぜ、線を外に見せるのか

この区分を公開しているのには理由があります。線が見えないと、任せる範囲をご自分では決められないからです。

「AIにお任せください」とだけ言われた場合、任せた先で何が起きるのかは分かりません。どこで止まるのかが分かってはじめて、任せる判断ができます。ですから当社は、できることと同じ熱量で、やらないことを書きます。

決めるべきことだけが人間を通る。それ以外は自動で動く。

06線は、あとから内側へ動かせます

最初から広く自動にはしません。第4章で書いた歯止めを置いたうえで、試運転から始めます。記録が積み上がって、判断のぶれが小さいことが確かめられたものだけ、自動の側へ移します。

逆方向にも動きます。おかしな結果が続けば、自動から人の手前へ戻します。信頼は最初に渡すものではなく、実績で得るものとして扱っています。ただし、03の五つは動かしません。

07まとめ

ご相談のとき、まずこの線をどこに引くかから決めます。何ができるかより、何を任せないかを先に決めたほうが、あとが楽になるためです。

この章を、さらに深く ── 3本

C-07-1 自動にしないと決めた仕事 ── できるかどうかとは別に、決めておく線。
C-07-2 承認をどこに置くか ── 止める場所が一つだけだと、そこが詰まります。
C-07-3 間違えたとき、誰が答えるか ── 責任は移せません。説明できる形にしておきます。

この線を仕組みとしてどう固定しているかは「構造」のページ(双円錐)に、判断が必ず一点を通る形として書いています。関連して、決めなくてよいことまで人に上げない設計は第5章にあります。

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/NEXT

落ちたとき、
誰が最初に気づくか。

線を引いたあとに残るのは、動かしつづける話です。静かに止まったものに、誰がいつ気づくのか。次の章で書きます。

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