承認の画面に毎日五十件が並ぶと、人は読まなくなります。一件ずつ中身を確かめる時間がないからです。まとめて押すようになると、承認は通過の儀式に変わります。
承認は、置けば安全になるものではありません。読まれてはじめて意味を持ちます。ですから、読める件数まで減らすことが設計の中身になります。
件数が減らないまま画面だけ整えても、事態は変わりません。まず本当に人が見るべき件はどれかを絞ります。絞れないうちは、承認を置くこと自体が先送りになります。
実行の前に止める、実行してから見せる、そして一部だけ抜き取って見る。この三つを、内容によって使い分けます。
実行前 ── 押すまで動きません。戻せないものに使います。件数は少なく保ちます。
実行後 ── 先に動かし、あとで一覧を見ます。取り消せる仕事に向きます。
抜き取り ── 全部ではなく一部だけ見ます。件数が多く、傾向を見れば足りる仕事に向きます。
抜き取りは軽く見られがちですが、量の多い仕事では実務的です。百件を全部見るより、十件を丁寧に見るほうが、ずれに気づきます。
三つを混ぜないことも大切です。押さないと動かないものと、すでに動いたものが同じ画面に並ぶと、見る側が取り違えます。分けて出します。
判断の基準は前の記事と同じです。取り消せるかどうか(C-07-1 自動にしないと決めた仕事)。支払い、対外的な公開、削除。ここは押すまで動かしません。
逆に、社内の記録や下書きの作成まで実行前に置くと、承認の列が伸びます。列が伸びると、大事な一件が埋もれます。
承認する側の負担を減らす方法は二つです。上げる件数そのものを減らすか、一件あたりの判断を軽くするか。
後者は、見せ方で変わります。何を根拠にその案が出たのか、何が変わるのか、取り消せるのか。この三つが一画面に無いと、人は判断できません。画面を作る前に、この三つを決めます。
AIを使う画面の作り方は、公開されている設計指針が参考になります(英語)。Google「People + AI Guidebook」↗
仕組みごとに承認の画面が散らばると、見落とします。当社は、どの仕組みから上がってきたものでも一つの場所に集めて、そこだけを見れば済む形にしています。
集めると、もう一つ良いことがあります。溜まっている件数が見えます。承認待ちが増え続けている仕組みは、線の引き方を間違えているか、そもそも人が要らない仕事です。溜まり方が、設計の答え合わせになります。
集約は、承認する人が替わったときにも効きます。どこを見ればよいかが一つに決まっているからです。担当が替わるたびに手順を教え直す状態は、いずれ止まります。
押した記録は残りますが、押さなかった記録は残らないことがよくあります。差し戻した件と、その理由。ここが残っていると、次の改善の材料になります。
差し戻しの理由が同じところに集まっていれば、その部分は作り直せます。人が毎回直しているところは、自動にできる余地がある場所です。
反対に、差し戻しがまったく出ていない承認は、見直しの対象です。押すだけの手順になっているのなら、置く場所が違います。
差し戻しの理由は、短くてもかまいません。一行あれば、あとで集められます。
直近7日で決まった件数は 88件、30日では 373件 です。この数が読める範囲に収まるように、上げる基準のほうを調整しています。承認の場所は一か所に集約しました。
溜まっている件数を毎日見て、増え続けているものは線を引き直します。数え方は「AIの中身」に開いています。
止める場所が決まっても、間違いは起きます。次は、そのときに誰が答えるのかという話です。
章と記事の全体は図書館の見取り図で一枚にまとめています。