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棚B 仕事をまかせる ── 第4章の深掘り 2026-07-25 読了 約4分

短期と長期の記憶
忘れてよいものと、残すもの

この記事について

「先週お伝えしたことを覚えていません」というご相談は、たいてい記憶の種類の話です。AIの記憶は二つに分かれます。その場で消える短期と、こちらが選んで残す長期。混ぜて考えると、どちらの側を直せばよいか決まりません。

第4章「エージェント」を深く読む 全3本B-04-3 / 全3本
  1. 入口エージェント ── 道具を使い、自分で動くAI
  2. B-04-1何を渡し、何を渡さないか ── 道具を持たせる前に
  3. B-04-2ループを止める設計 ── 上限・戻し方・記録
  4. B-04-3短期と長期の記憶 ── 忘れてよいものと残すもの

01二種類あります

短期の記憶は、いま話している一続きのやりとりです。指示、資料、これまでの応答。これは一度に扱える窓の中に置かれていて、やりとりが終われば消えます(A-02-1 トークンと文脈の窓)。

長期の記憶は、別に保管しておいて、必要なときに取り出すものです。放っておいて溜まるものではありません。残すと決めたものだけが残ります。

短期と長期

短期 ── いまのやりとり。窓の中。終われば消えます。速いかわりに、量に上限があります。
長期 ── 選んで保管したもの。必要なときだけ取り出します。量は増やせますが、探せる形にしておく必要があります。

この分け方は、エージェントを作る道具立ての側でも同じです(英語)。Google「Agent Development Kit ── Memory」↗

02短期は、消える前提で使います

長いやりとりを続けると、前半が薄くなります。窓に入っていても、真ん中は参照が弱くなるためです。ですから当社は、大事な決めごとは短期に置きっぱなしにしません。その場で書き出して、長期の側へ移します。

「さっき言いましたよね」が通らないのは、意地悪ではなく作りの話です。

長いやりとりの途中で「先ほどの条件で」と書くと取り違えるのも、同じ理由です。当社は、途中で条件を箇条書きに直して貼り直しています。手間のようですが、やり直しが減ります。

03長期は、選んで残します

ここでよく起きるのが、全部残す設計です。会話も報告も下書きも、ひとまず入れておく。すると量は増えますが、探したときに似たものが大量に返ってきます。古い決定と新しい決定が並んで出れば、AIはどちらかを引きます。

切り分けと入れ替えの考え方はA-03-1 資料の切り分けに書きました。記憶も同じで、足すだけの運用は精度を落とします。

04残す価値があるのは、三つです

長期に残すもの

1. 決めたこと ── 何を選び、何を選ばなかったか。理由を一行添えます。
2. 直した理由 ── 失敗と、その後どう変えたか。次に同じ手を打たないための材料です。
3. 例外 ── 「この取引先だけは別」。手引きに載らないのに効くものです。

逆に、その場の言い回しや途中の下書きは残しません。あとで参照されないものは、探す邪魔になります。

三つのどれにも当てはまらないものは、残しません。毎回その判断をするのは大変ですから、形をあらかじめ決めています。一件は数百字まで、決めたこと・理由・日付・出どころの四つを必ず入れる。形が決まっていると、残すかどうかも決まります。

05記録から、記憶を組み立てます

当社は、動いた記録をそのまま記憶にはしていません。いったんエラーや結果を集め、そこから教訓の候補を抜き出してから入れています。実測では 3,521件 のうち 3,518件、99.9% を教訓として転換しました。

この形にしてある理由は、記録と記憶が別のものだからです。記録は起きたこと、記憶は次の判断に使える形にしたもの。同じではありません。

06探せる形にしておきます

当社の記憶は 11,239件 で、全件が検索できる状態にあります。意味の近さで探せるように、一件ずつ 768次元 の形に直してから保管しています。仕組みはA-03-2 意味で探す検索と、語で探す検索に開きました。

件数が増えても困らないのは、一件が小さく、出どころが付いているからです。

07消し方も、先に決めます

残す話と同じだけ大事なのが、消す話です。個人に関わるもの、契約が終わったお客様のもの、期限のあるもの。いつ、誰が、どうやって消すかを先に決めておきます。決めていないと、消せないまま溜まります。

預けた資料がどこに残るのかという整理はA-03-3 渡した資料はどこへ行くのかにまとめました。

08まとめ

一体の作り方が見えたところで、次の章は分け方の話です。役割を分けると良くなる仕事と、悪くなる仕事があります。

第4章の枝 ── いま読んでいる位置
第4章 エージェント B-04-1 何を渡し、何を渡さないか B-04-2 ループを止める設計 B-04-3 短期と長期の記憶(いまここ)

章と記事の全体は図書館の見取り図で一枚にまとめています。

当社の記憶は 11,239件、全件が 768次元 の形で検索できる状態です。エラー 3,521件 から 3,518件(99.9%) を教訓に転換して入れています。数え方は「AIの中身」に開いています。

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分けて良くなる仕事、
悪くなる仕事。

役割を分ければ良くなるとは限りません。一体で足りる場面と、分けたほうがよい場面を次の章で。

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