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棚A ことばをそろえる ── 第3章の深掘り 2026-07-25 読了 約4分

渡した資料は、
どこへ行くのか

この記事について

「社内の資料をAIに渡して大丈夫でしょうか」というご質問には、まず二つに分けてお答えしています。学習に使われるかと、どこに残るか。この二つは別の問題で、確認する相手も、対処の仕方も違います。

第3章「RAG」を深く読む 全3本A-03-3 / 全3本
  1. 入口RAG ── AIに、調べてから答えさせる
  2. A-03-1資料の切り分け ── 探せるかは切り方で決まる
  3. A-03-2意味で探す検索と、語で探す検索
  4. A-03-3渡した資料はどこへ行くのか

01混ざりやすい、二つの問題

ひとつめは、渡した内容がAIの中身の改良に使われるか。ふたつめは、渡した内容がどこかに保存され、誰かが見られる状態になるか。前者が無くても、後者は起きます。

そもそも、質問に答える動作でAIが賢くなるわけではありません。賢くなるのは学習の工程だけで、答える工程とは別です(A-01-1 学ぶ時間と、使う時間)。「送った」ことと「学習に使われた」ことは、同じではありません。

02確認する五点

渡す前に確かめること

1. 学習に使うか ── 使わない設定になっているか。既定はどちらか。
2. 保存するか、いつまでか ── 何日残るのか、消えるのか。
3. どこに置かれるか ── どの国のどの設備か。取引先との約束に関わります。
4. 誰が見られるか ── 提供元の担当者が読める仕組みになっていないか。
5. 消せるか ── 消してほしいと言えるか。手続きはどうなっているか。

一つめだけを確かめて安心してしまう例が多いところです。学習に使われないとしても、記録として一定期間残る作りは普通にあります。五点を分けて聞くと、話が早く進みます。

03公にも、注意が出ています

個人情報を含む内容を扱う場合は、法令上の確認事項があります。国の委員会からも、生成AIの利用について事業者向けの注意が出ています。

とくに気をつけるもの

お客様の氏名・連絡先、取引先から受け取った資料、採用の応募書類、健康や家庭の事情。
これらは「便利だから」で渡す前に、社内の決めごとを先に作ります。

生成AIの利用にあたっての注意点が示されています。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」↗

04口頭ではなく、書いてあるものを見ます

五点を尋ねると、たいていは「学習には使いません」というお返事をいただきます。それは正しいのですが、口頭のご説明と、契約書や利用条件に書いてあることは別です。取引先に説明を求められたときに出せるのは、書いてあるほうだけです。

ですから当社は、利用条件のどこに書かれているかまで確かめ、控えを残します。加えて、無償の枠と有償の枠で扱いが違う場合があります。試したときの条件と、本番で使う条件が同じかどうかは、必ず見ておくところです。

05RAGは、渡す範囲を自分で決められます

ここがRAGの利点です。社内の資料は自社側に保管したままで、質問のたびに関係する数か所だけを渡します。全部を預ける必要はありません。

渡す量が小さくなるので、確認すべき範囲も小さくなります。「二百ページの手引きを預けてよいか」ではなく「この三段落を渡してよいか」という判断になる。判断の単位が小さくなることが、そのまま安全につながります。

06社内でも、見せ分けが要ります

見落とされやすいのがこちらです。社内向けに作った仕組みでも、誰でも何でも聞ける状態にすると、給与の資料や人事の記録に手が届いてしまいます。探せる範囲を、聞く人によって変えるのが前提です。

当社は、この線引きを設計の最初に決めます。あとから足すと、抜けが残ります。

07消し方を、先に決めておく

「入れたものを消せるか」は、入れる前に確かめる項目です。取引先から「うちの資料は外してほしい」と言われたときに、どの塊を消せばよいかが分かる形になっているか。出どころを貼っておくのは、探すためだけでなく、消すためでもあります(A-03-1 資料の切り分け)。

08当社の場合

当社は自社の記憶 11,239件 を自社側の設備に置いています。答えさせるときも、渡すのは質問に近い数件だけです。何を渡し、何を渡さないかを自分で決められる形にしておくことを、設計の条件にしています。数え方は「AIの中身」に開いています。

09まとめ

ここまでで、AIは調べてから答えるようになりました。次の章は、その先です。AIが自分で道具を使い、手を動かしはじめます。

第3章の枝 ── いま読んでいる位置
第3章 RAG A-03-1 資料の切り分け A-03-2 意味と語、両方で探す A-03-3 渡した資料はどこへ行くのか(いまここ)

章と記事の全体は図書館の見取り図で一枚にまとめています。

当社は記憶 11,239件 を自社側に置き、答えさせるときは質問に近い数件だけを渡しています。何を渡さないかを自分で決められる形にしておくことを設計の条件にしています。実測値は「AIの中身」に開いています。

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第4章へ、進む。

調べて答えるところまで来ました。次は、AIが道具を使い、自分で手を動かす話です。止め方の設計まで含めて。

第4章 エージェント を読む