ひとつのAIに、集めることも判断することも書くことも任せると、指示文が長くなります。長い指示は、途中が薄くなります。そしてどこで間違えたのかが分からなくなります。全部を一人でやった仕事は、後から検算しにくい形です。
もう一つは、権限です。一体で全部やるなら、その一体に全部の道具を渡すことになります。読むだけで済む工程にまで、書き込みの権限が付きます(B-04-1 何を渡し、何を渡さないか)。
直すときにも困ります。一体の中で全部を済ませていると、どの指示を変えれば直るのかが見えません。長い指示文の一行を書き換えたら、関係のない振る舞いまで変わる。分けていないことの副作用です。
1. 手順が分かれている ── 集める、整える、判断する。工程の区切りがはっきりしている。
2. 判断の基準が違う ── 良い案を出す基準と、危なさを指摘する基準は別物です。
3. 同時に進められる ── 待たずに並べられるなら、分けたぶんだけ早く終わります。
単体で足りるかを先に確かめる考え方は Anthropic の解説にも整理されています(英語)。Anthropic「Building Effective AI Agents」↗
二つめが、当社でいちばん効いています。提案する役の隣に、反対する役を置く。同じ一体に「よく考えて、批判もして」と頼むと、たいてい賛成が返ってきます。
受け渡しです。前の工程の答えを、次の工程に渡すたびに要約が挟まります。要約は情報を落とします。三回渡せば三回落ちる。分けるほど、伝言の劣化が積みます。
費用も増えます。呼ぶ回数が増えれば、そのぶん使った量が増えます(第9章 費用)。速くなるのは同時に進められる場合だけで、順に流すだけなら、分けても総量は減りません。
速さも、期待とずれることがあります。三体に分けても、前の役の答えを待つ形なら、一体のときより遅くなります。同時に走らせられるかどうかは、分ける前に確かめます。
短い一続きの仕事は、分けないほうが速くて安いです。「この文章を整える」「この表から三行抜く」。工程がひとつしかないものを二体に分けると、受け渡しの手間だけが増えます。
迷ったときは、一体で作ってから、詰まったところだけを切り出す順序にしています。最初から役割表を作ると、動いていない役ができます。
動いていない役は、並んでいるだけで点検の手間を増やします。当社は台帳の登録 105体 のうち、実際に動いている 85体 だけを稼働数として数えています。
実測では 85体 が動いていて、内訳は日々の動きを記録する観測が 60体、記憶を整える知識が 9体、段取りを進める循環が 8体、順番を組む統率が 5体、最終判断の材料を用意する判定が 3体 です。
数が多いのは観測です。見る仕事はいくらでも分けられて、しかも分けても劣化しません。逆に判定は 3体 しかありません。判断は分けるほど責任の所在が薄くなるためです。
分けやすい ── 見る、数える、集める。答え合わせが機械でできるもの。
分けにくい ── 決める、まとめる、書き分ける。基準が文脈に依るもの。
「営業担当のAI」「経理担当のAI」という分け方をご希望いただくことがありますが、当社はとっていません。人の組織図に合わせると、一体が受け持つ仕事の幅が広くなり、結局は一体に全部持たせた形に戻ります。
分けるのは仕事の単位です。誰の仕事かではなく、何をする工程かで切ります。
もう一つ理由があります。組織は変わりますが、工程はあまり変わりません。「請求書を読み取る」という工程は、担当が替わっても同じ形で残ります。変わりにくいほうに合わせて切ると、作り直しが減ります。
分けると決めたら、次は束ね方です。型は三つあります。
章と記事の全体は図書館の見取り図で一枚にまとめています。